【会長挨拶】
この度、会長職を拝命しました滋賀大学の横山です。就任にあたり一言ご挨拶申し上げます。
現在、我が国は、未曾有の人口減少・超高齢社会、国家的な財政難に突入しています。加えて、近年は、感染症対策や急速なDXの推進など、地方公共団体は、次から次へと新しい業務への対応に迫られています。このような地域を取り巻く急速な変化に、我が国の体制は追いついているとは言い難いものがあります。国の法律や制度そのものを変えていく必要もありますが、地方公共団体は国の整備を待つことなく目の前の諸問題に立ち向かっていかねばなりません。
地方公共団体の健全な経営をチェックする機能として、我が国には地方自治法において監査制度が定められています。監査には、大きくは「財務監査」と「行政監査」がありますが、通常実施される「定期監査」等は「財務監査」が中心になっており、「行政監査」は「必要がある場合」に限られています。
平成10年(1998年)に施行された「外部監査(包括外部監査・個別外部監査)」も「財務監査」が中心であり、「行政監査」は対象となっていません。そのため、外部監査人も弁護士や公認会計士、税理士等に限定されており、政策に精通した行政書士が含まれていません。さらに「包括外部監査」は中核市以上の都市に義務付けられているだけで、いまだ全自治体に普及していません。その結果、費用の高留まりや監査対象事業の固定化など多くの課題が指摘されています。
このような課題の背景には我が国の地方公共団体における監査制度が「財務監査」中心で「行政監査」の実績が少なく、「政策の適否」は専ら議会の判断に委ねられていることもその理由の一つとして考えられます。しかし、首長や議会は時に「ポピュリズム」に陥る危険性があり、中立・公平な立場から、客観的・科学的な視点に基づき、政策をチェックする機能が必要だと考えます。その手段こそが「行政監査」であります。
最終的には国に制度改正を求めていく必要がありますが、現行の制度の中でも出来ることは多々あります。当学会は「行政監査」をさらに発展させるべく、地方公会計や行政評価との連動、生成AIの活用等「行政監査の可能性」を探求していきたいと思います。
当学会は研究者や実務家の枠を超えた会員から構成されていることも特徴の一つです。行政経営改革や自治体監査制度に関心のある研究者、実務家、自治体関係者の皆さんの参加をお待ちしております。
令和7年10月吉日
日本行政監査学会 会長 横山 幸司
【会長紹介】
横山 幸司(よこやま こうじ)
滋賀大学経済学部 教授/産学公連携推進機構 社会連携センター長
博士(学術)
行政職員を経て2013年度より現職。行政職員の間に国、県、市、町村という地方自治の全ての層に勤務した経験を持つ。各種行政委員や講演等で関わった自治体は延べ460以上を数える。(2025.10時点)
全国の自治体において「行政事業レビュー」など行政経営改革を実践している。
内閣府地方創生推進事務局「地域活性化伝道師」、内閣府「PPP/PFI専門家派遣制度」登録専門家、国土交通省「スモールコンセッション・プラットフォーム」運営委員、総務省「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」アドバイザー、文部科学省「学校施設整備・活用のための共創プラットフォーム」(CO-SHA)アドバイザーをはじめ国及び地方公共団体における公職多数。
主な著書に、「行政経営改革の要諦」「行政経営改革の理論と実務」など。





